院長のコラム | 2011年1月

“ドクトル・イトウの地球の果てまで“ 世界60ヶ国以上を訪れた、院長のちょっと変わった見聞録

第3回 肌の色(スーダン):スーダンの人々

 スーダンの人々を紹介しようと、撮りためた写真を探しても、顔の写った写真があまり見当たらない。イスラム社会ではむやみに写真を撮ることは厳禁だからだ。では、写真を撮られるのがそんなに嫌なのかというと、そういうわけではないようだ。
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 職場の現地職員の結婚式に招かれた(写真は新郎新婦)。
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 その日は夕暮れ時から、親類や近所の人たちが集まってお祭り騒ぎ。
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 大音響のスーダンミュージックで夜通し踊り続ける。
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 当時はまだデジカメというものが現地では珍しく、撮った写真がその場で見られるというので大騒ぎ。
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 次から次へと撮ってくれと集まってくる。
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 子供たちの目が、本当に生き生きとしている。
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 滅多に撮ることのできないスーダン女性達の笑顔も、この日は撮り放題だった。
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 ちなみにスーダンに限らずイスラム社会では、見知らぬ女性の笑顔を写真に納めることは非常に難しい。
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 家族や亭主以外の男に笑顔を見せることは、イスラムの教えに背くことだからだ。
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 人類学など難しいことは別にして、スーダン人の肌は写真のように黒い人と茶色い人に大別できる。
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 特に北部スーダンには、茶色い人が多い。地理的に考えるとその理由が見えてくる。エジプトを始め北アフリカや中東諸国には白い人が多い。
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 一方、西アフリカのギニア湾岸にはイスラム教徒が多いのだが、この黒いイスラム教徒たちが巡礼でイスラムの聖地メッカ(サウジアラビア)を目指す途中でスーダンは通り道となる。
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 北部スーダンの茶色い人達はこの黒い人と白い人の混血によってできたものと考えられているようだ。
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 この日はお祭り、食事も特別なごちそうなのだろう、子供達の目が輝いている。
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 最近の日本の子供達には見られない輝きのような気がする。女性達もこの日はとびっきりのおめかしをして輝いていた。


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第4回 命の水(スーダン):人道支援に関わって

 今回は少し真面目に、アフリカ諸国など途上国への"援助"について書いてみたい。アフリカでは欧米先進国が競って援助合戦を繰り広げている、最近では中国も加わり熾烈な競争だ。スーダンにも人道支援を職業とする世界中のNGO(非政府組織)が事務所を構えていた。中でも、特にヨーロッパ諸国は積極的に援助していた。
 かつて、アフリカの人的資源(奴隷)、天然資源を好き勝手に搾取したのがヨーロッパ人。その後、彼らが勝手に決めた国境線によって、アフリカは部族間の民族紛争を繰り返す。そのヨーロッパ人が今、施しのごとくせっせと人道支援を行っている。第三者であるアジア人の目から見ると、"富の循環"のように見える。
 自分はスーダンで"草の根支援"という日本政府の小規模な人道援助にかかわらせてもらった。費用対効果が大きく、できるだけたくさんの人々がその恩恵に授かることができる支援、そういったプロジェクトを探して援助するのがこのプログラムである。では、実際にどんな援助がおこなわれていたのかを紹介したいと思う。
 今のアフリカで最大の課題は「水と教育」であり、この二つは非常に密接に関わっているのだ。国の発展に不可欠であるのは教育であることに違いない。AIDS問題も、教育が行き届けば改善はするであろう。
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 スーダンの地方では飲み水の確保が非常に困難かつ重労働だ。片道何時間もかけて水くみに行くことも珍しいことではない。しかもその作業は主に女性と子どもが担っている。水汲みのために一日の大半を費やし、学校に行くことができず、職業を身に付けることもできない。
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 井戸を掘り、安全な水源を確保することは大事な支援だ。井戸と言っても200メートル近く掘る"深掘り井戸"で、そのまま飲めるようなきれいな水が得られる。
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 写真は難民キャンプに掘られた井戸で、ロバ車にドラム缶を積んだ給水車が集まってくる。
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 見てみると、皮肉にも自宅の水道水よりきれいな水だった。
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 ただし、こういった大がかりな井戸は、何処でも、簡単にいくつもというわけにはいかない。また、汲み上げポンプが故障したら、次の援助を待つのみであろう。そこで、より現実的でユニークな援助をいくつか紹介する。
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 このコンクリートでできたポットのようなものは、簡易浄水器だ。
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 この中に砂や土を入れて、貯めた水を濾過するのだ。
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 次に、これは水汲み作業を効率的かつ勘弁にするために、水のポットをボール型にして、そのまま転がして大量の水を楽に運べるように考えられたものである。両者とも非常に安いコストで、かつ材料は現地調達できる。単純でも、こういった現実的な援助が実際には役に立つ。

 次回は、アフリカならではの楽しみ"サファリ"を紹介する。

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